こんばんは!
吹田千里丘のお花屋さん「花色」の弟の方です。
19歳くらいの時に図書館で借りて読んで、
それ以来ぶりにカズオ・イシグロさんの「わたしを離さないで」を読みました。
カズオ・イシグロさんは親切な人です、わかりにくい表現は使わず、
最後まで読者である僕らの手を引いて(きっと厚くて温かい手なんだろうな)
物語の中を足並みを揃えて寄り添い歩いてくれる。
例えば比喩として、驚嘆を表す時に、
「フェンスの柱に世界一の珍蝶が止まっていた」という。
知識がなければその一端に触れることができないような表現を用いることはせず、
小学生にでもわかるような言葉を選ぶ。
ナーバスなテーマを扱っているにも関わらず、
その間口は広く、誰にでも入り込める世界観を作り出している。
ハサミは切るために、ソファーは腰かけるために、
目的(本質)がまず先にあって作られるものだが人間はどうなのか…
その本質を自分の手で選びとることに生の意義があるとキルケゴールは言う。
だがこの物語に出てくる登場人物のほとんどは、
「ある目的」が先行して作られ、育てられた人間なのである。
トミーが描く裏板を外したラジオのような精巧なつくりを持つ、
ひどく変わった動物の絵は、それに対する比喩であり、
それらの動物が外見と比べて、
どこか柔らかく傷つきやすい事にキャシーは心配になる。
「どう身を守り、どう食べ物をとるのか」と。
昔読んだSF小説のことをページを繰りながら思い出しました。
細かな筋とか題名は忘れてしまったけど、ある惑星に住む人々の話。
そこには高度な文明があり、科学は生活を豊かにして、
人々は相互に幸せそうで、なんの不足もない暮らしをしている。
でも違う惑星からやってきた主人公は彼らの口ぶりや表情から、
なにか違和感を感じ、そこで過ごすうちにある秘密を知ってしまう。
実は彼らの幸福はその町の地下に幽閉されたたった1人の少女の、
残酷な犠牲のうえに成り立つものだった。
極端な話になってしまいましたが、
僕らは誰かの不幸の上に立ち笑い合うことができるのだろうかということ。
答えはそれが出来るんですね、だから生きていける。
見て見ないふりをして、自分とは無関係だと思う。
というか結局のところ、人間の社会というものが、
それを織り込むことで成り立っているのを僕らは経験として知っている。
だからこそ、少しでも強くあろうとする。
それを非情と呼ぶのなら、
なぜ僕らはキャシーやトミーにこれほどまでに心を揺さぶられるのだろうか?
長々と書きましたが、カズオ・イシグロさんの小説は、
明快なテーマがあり、それを有効に描くためのジャンルが毎回違います。
とても入念に構成された物語は、
読みやすい言葉で、なのに軽薄になることはなく、
紳士で親切なカズオ・イシグロさんの人柄がその文章に染み付いているように、
僕は思います。
さて、フラワーアレンジメントの紹介です。
退職される方への贈り物でお作りしました。使用したお花は、バラ2種(ミルバ、アプリコットファンデーション)、ガーベラ、カーネーション、スプレーバラ(アンティークレース)、アイビー、アセビ、ロータスプリムストーン。いつぞやの記事で、「忘れられた巨人」のことも書いたのですが、
意図的にカズオ・イシグロさんのことを書こうと思っているのではなく、
たまたま読書感想文みたいなのを書こうとかな思った時に、
手に取っていることが多いんです。
主人公キャシーの語り口はとても静かで、
それが物語の終わりまで崩されることはないです。
自制の効いた言葉が、本来であれば感傷に流されるところであっても、
その姿勢を崩そうとせず、その様がより一層に感じられる。
また言い方を変えれば、読者の想像により深く訴えかけている。
僕はノーフォークに、失われたカセットテープを探しに行った時の、
キャシーとトミーの会話とその感情の動き方がとても好きです。
ベタな表現だけど、
息を呑むほど美しい夕陽が、少しずつ、でも確かに、
その手から滑り落ちていくように沈んでいくといった感じ。
見て頂きありがとうございます。
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3日前(~前日)までにご予約をお願いします。※月曜日午前中分は4日前までにお願いします。
特に土曜日は、日曜定休日のためお花がなくなってしまいますので事前予約をお願いします。
お手数をお掛けして誠に恐れ入りますが予約に合わせた仕入で新鮮なお花を提供したい想いがあります。
また少人数で営業していますので事前予約にご理解いただけますと幸いです。
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